映画『オデュッセイア』レビュー|クリストファー・ノーラン監督最新作、“何かすごいものを観た”を体感するIMAX®で観るべき大作

「映画好きの間で『オデュッセイア』が話題だけど……なぜ?」
みなさんの周りにいる映画好きの方々、映画『オデュッセイア』でザワザワしてませんか?本作は古代ギリシャから伝わる壮大な冒険譚を、現代映画の最高峰ともいえる撮影手法で映像化した作品です。上映時間は172分。登場人物も多く、神々や怪物まで現れます。それでいて、物語の中心はとてもシンプル。
戦争を終えた王オデュッセウスが、妻と息子の待つ故郷へ帰ろうとする。
そういうお話。そして、本作が注目されている最大の理由は、クリストファー・ノーラン監督の最新作であるということ。ノーラン監督のことをよく知らない、ということであれば本記事中で触れていますので、ぜひ読んでみてください。
本作をIMAX®試写会で鑑賞してきたんですが、鑑賞後に改めて予告編を見直すと、この壮大な物語のほんの一部しか分からないくらい、見どころが隠されていました。海の大きさ、人間の小ささ、神話の世界を本当に撮影してきたような風景、緻密につながっていく物語、そして、一人ひとりに物語を感じさせる豪華キャスト。
観終わった直後は「何かすごいものを観た」という気持ちになるでしょう。まず、その感覚を味わってほしい映画です。
そもそも『オデュッセイア』って何?
まず、そもそも原作となる『オデュッセイア』について。『オデュッセイア』は古代ギリシャの詩人ホメロスに帰される叙事詩です。「叙事詩」と聞くと難しそうですが、ものすごーーーーく昔から語り継がれてきた冒険物語くらいに考えてもらって大丈夫です。
主人公は、独立国家イタケの王であるオデュッセウス。マット・デイモンが演じています。そのオデュッセウスは、他国と連合しトロイア戦争へ向かいます。
10年続いたトロイア戦争は終結しますが、他国の王たちが帰国する中、オデュッセウスはさまざまな苦難に直面し、なかなか故郷へ帰れません。海を渡り、さまざまな土地を巡り、怪物や神々の力に翻弄されながら、妻ペネロペと息子テレマコスの待つイタケを目指すのです。


つまり、「戦争から帰国するだけなのに、とんでもなく長い冒険になってしまった王様の物語」なのです。これを頭に入れておけば、本作の理解がかなり分かりやすくなります。
オデュッセイアは「歴史映画」ではなく、神話クラスの冒険映画
予告編には巨大なサイクロプスらしき存在も登場します。「あれ?歴史ものじゃないの?」と思うかもしれません。
というのも『オデュッセイア』は史実を再現する歴史映画ではなく、神々や怪物が存在する架空の物語です。映画でも、現実的な人間ドラマの中へ、神話的な存在が自然に入り込んできます。ここが本作の面白いところです。画面に映っているものは驚くほどリアルなのに、そこで起きていることは神話クラスの出来事なのです。そのギャップが、本作ならではの迫力につながっています。
「トロイの木馬」は、この世界の有名エピソード
『オデュッセイア』を知らなくても、「トロイの木馬」を聞いたことがある人は多いでしょう。長く続いたトロイア戦争で、巨大な木馬を残して撤退したように見せかけ、その内部に兵士を潜ませる。木馬が城内へ運び込まれたあと、兵士たちが夜中に外へ出て門を開く。現代ではコンピューターウイルスの「トロイの木馬」の由来として知られるエピソードです。
本作でも、この木馬が登場します。そして、いかにもクリストファー・ノーラン監督らしいのが、巨大な木馬を実際に作っていること。スクリーンで見ると、「これ、本当に作ったの?」という存在感があります。
そもそも……クリストファー・ノーラン監督作品はなぜ人気?
さて……映画好きの方々が『オデュッセイア』にこれほど注目している最大の理由が、監督であるクリストファー・ノーランの存在です。
ノーラン監督の代表作には、『ダークナイト』(2008)、『インセプション』(2010)、『インターステラー』(2014)、『ダンケルク』(2017)、『TENET テネット』(2020)、『オッペンハイマー』(2024)などがあります。※()内は日本公開年
ふだん映画をあまり観ない人でも、どれか一作はタイトルを聞いたことがあるかもしれません。では、なぜノーラン監督の映画は毎回これほど話題になるのでしょうか。シンプルにまとめると、2つあります。
物語を緻密に魅力的に組み立てる脚本力とエンターテイメント性、映画館のスクリーンと音響で最大化する映像へのこだわり(特にIMAXが注目)です。
『オデュッセイア』では、その両方がこれまでになく大きなスケールで詰め込まれています。
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ここからは、本作の魅力を4つのポイントに絞って紹介していきます。
ポイント① バラバラに見えた物語がつながる、気持ちよさ
本作の序盤は、少し集中力が必要かもしれません。
故郷イタケへ帰ろうとしているオデュッセウス。
生死が分からない夫を待ち続けるペネロペ。
父親を知らずに育った息子テレマコス。
王位を狙ってペネロペに求婚するアンティノオス。
そして、オデュッセウスの長い旅で出会う人々。
複数の場所と人物と時代を行き来しながら進みます。最初は、「今は誰の話だっけ?」となることもあるかもしれません。ただ、話が進むにつれて、「あの言葉はここにつながるのか」「あの人物がここで効いてくるのか」という答え合わせが始まります。


試写会で観ていて特に興奮したのが、この部分でした。最初に何気なく置かれた情報が、後から意味を持つ。別々に動いていた人物たちの行動が、一つの物語へ近づいていく。映画の終盤になるほど、最初から緻密に組み立てられていたことが見えてきます。
「難しかった」ではなく、「あとから全部つながってきた」。
観終わったときにそんな感覚が残るのが、本作です。
初心者は「3つの場所」だけ覚えておけば大丈夫
序盤で迷いそうになったら、細かい固有名詞を全部覚えようとしなくても構いません。ひとまず、
- オデュッセウスは故郷へ帰ろうとしている
- 妻ペネロペはイタケで待っている
- 息子テレマコスは父親の消息を求めて動く
この3本だけ追ってみてください。次第に、それぞれの話がつながってきます。ギリシャ神話の予習も必須ではありません。実際、ほとんど知識のない状態で鑑賞しても十分に面白く、鑑賞後に原典について調べたくなる作品でした。
知っておくとわかりやすい「ゼウスの掟」
劇中で覚えておきたい考え方のひとつが、客人をもてなす行動規範「ゼウスの掟」です。この言葉は、本作中でよく登場します。見知らぬ旅人や客を迎え食事などでもてなすことが重要な価値観である、という当時の考え方です。


これを知っておくと、「なぜ見知らぬ人をそこまで歓迎するの?」「大勢の男たちが王の家で宴を続けている理由は?」という場面が理解しやすくなります。
イタケでは王オデュッセウスが長期間不在、しかも生きているか死んでいるかも(イタケにいる人たちには)分からない。そこで、アン・ハサウェイ演じる王妃ペネロペとの結婚を望む求婚者たちが、次の王位を狙って集まっています。
しかしペネロペは夫の帰還を信じている。この状況が、イタケ側の大きな緊張感を生んでいます。
ポイント② IMAX®体験は「画面が大きい」だけではない
今回の試写会は、グランドシネマサンシャイン池袋のIMAX®スクリーンで行われました。であるがゆえに、強く言いたいところです。
近くにIMAX上映館があるなら、できればIMAXで観てほしいです。
本作は、全編IMAX®フィルムカメラで撮影された長編作品です。これは世界初のこと。つまりIMAX®で観ることで、本作の魅力が最大化されるように作られています。ノーラン監督と撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマは、新型IMAX®カメラを含む撮影技術の改良にも取り組んでいます。


ただ、技術を知らなくても問題ありません。私たち観客側が感じる違いは、もっとシンプルです。
視界の中にあるもの全部が映画になる。
そんな感覚です。
大海原だけで、こんなに情報量がある
例えば海の場面。海と船だけの場面。文字にすると、それだけです。でもスクリーンでは違います。波の高さ。遠くの水平線。船の揺れ。操船する多くの兵士たち。広大な空。吹き荒ぶ風。すべてが同時に目へ入ってきます。
主人公だけを見ていると、背景を見逃す。背景を見ていると、人物の動きを見逃す。何度観ても違うところへ目が行きそうです。「IMAX=大きい画面」というより、
一度に受け取る情報の量が増える
という感覚です。
海面と同じ高さにいる怖さ
個人的に強烈だったのが、海を低い目線から捉える場面です。カメラが海面に近い。そのため波が、自分の目線より高い位置まで迫ってきます。映画館の座席に座っているはずなのに、「海に放り込まれた」ような感覚になる。
風も、波も、音の振動も含めて、
ずっとオデュッセウスたちと彷徨っているような体験
です。
本当にその場所へ行って撮っている
本作では、ロケーションも重要です。トロイアを描く場面ではモロッコで撮影を行い、ギリシャの島々を含む複数地域でも大規模なロケが行われています。だから背景が「背景」に見えません。海が本当に荒れている。風が本当に吹いている。岩山が本当にそこにある。
試写会の最中、
古代ギリシャへIMAX®カメラを持っていったのでは?
と思ってしまうほどの説得力がありました。もちろん実際には現代の撮影ですが、それくらい場所そのものに説得力があります。
ポイント③ オデュッセウスだけではない「人間たち」を描く
本作がかなり時間をかけているのが、人物像の掘り下げです。主人公である英雄・オデュッセウスも、完全無欠のヒーローではありません。王としての責任がある。困難に立ち向かう勇気もある。折れない信念がある。聡明な知恵もある。
しかし、自分の判断が周囲を危険に巻き込むこともあります。
長い旅を続けるうち、「そもそも、この人は何のために帰ろうとしているのか」という部分まで掘り下げられていきます。巨大なスペクタクル映画なのに、最後に残るのは人間の感情。そこが本作の大きな魅力です。
アン・ハサウェイ演じるペネロペは「待つ妻」だけではない
王妃ペネロペも印象的でした。夫が帰ってこない。生きているのかすらわからない。国では次の王を狙う男たちが待っている。そんな状況で、ただ窓辺から夫を待ち続けているわけではありません。
国をどうするのか。自分は何を選ぶのか。息子をどう守るのか。
ずっと判断を迫られています。
ペネロペを演じるアン・ハサウェイ自身が、ペネロペを待つだけの人物ではなく知性と意思を持った存在として捉えていたそうです。
トム・ホランド演じるテレマコスは「伝説の父」を追う
息子テレマコスも面白い人物です。父親は世界に名を知られた英雄。でも、自分が生まれた頃には父は戦争に出ていて、自分自身は父のことをほとんど知らない。周囲から聞かされるのは「偉大なオデュッセウス」の話ばかりです。
では、自分にとって父親とは何なのか。自分は王の息子としてどう生きるのか。
トム・ホランドの持つ若さが、テレマコスにかなり合っています。『オデュッセイア』は冒険映画でありながら、父と息子の物語として観ても面白い作品です。
ポイント④ 「この人も出てるの?」が続く豪華キャスト
そして、映画をあまり詳しく知らなくてもわかりやすい見どころ。
キャストがものすごく豪華です。
主人公オデュッセウスにマット・デイモン。ペネロペにアン・ハサウェイ。テレマコスにトム・ホランド。
さらに、
ロバート・パティンソン
ルピタ・ニョンゴ
サマンサ・モートン
ゼンデイヤ
シャーリーズ・セロン
など、主役クラスの俳優が次々に登場します。普通なら、「この俳優が出てきたから、この人が物語の中心だろう」と思うレベルの人ばかりです。ところが本作では、スターを見せるためだけの配役にはなっていません。
それぞれがちゃんと『オデュッセイア』の世界の住人として登場します。
スターの力で映画を大きく見せるのではなく、大きな物語を演じ切るためにスターが集められている。
そんな印象でした。
「神話がわからないと楽しめない?」→大丈夫です
ギリシャ神話に疎くても、大丈夫。ここは一番伝えたいところです。古代ギリシャ史を勉強する必要もない。神々の家系図を覚えなくてもいい。


まずは、
オデュッセウスが家に帰ろうとしている。
これだけで十分です。もちろん、神話を知っている人なら、「この人物が出てきた!」「この有名なエピソードをこう撮るのか!」という楽しみも増えるでしょう。でも、本作は神話知識のテストではありません。
むしろ鑑賞後に、「一つ目の巨人ってどういう怪物?」「カリプソって何者だったんだろう?」と調べ始めるくらいがちょうどいいと思います。私自身、試写後に『オデュッセイア』の入門書を買いました。映画を入口に原典へ戻りたくなる。それも、本作の魅力です。
「何かすごかった」を言葉にするなら
約3時間の映画を観終わって、「とにかくすごかった。でも、何が一番すごかったんだろう?」となった人もいると思います。
それは当然です。本作には、多くの要素があります。それを整理すると、「すごさ」は主に4つです。
物語の構成が緻密。序盤で置かれた情報が、後半になるほどつながっていきます。
画面の情報量が多い。人物だけでなく、海、風景、建物、船、群衆まで物語の一部に感じられます。
人物が“役割”ではなく、人間として描かれている。英雄、妻、息子という記号ではなく、それぞれに迷いや弱さがあります。
それを演じる俳優が、とにかく豪華。スター性だけに頼っていません。
この4つが同時に動いているから、「何かものすごいものを見た」という感覚になるのだと思います。
上映時間172分は長い?
上映時間は172分。2時間52分あります。決して短くはありません……。ただ、個人的には「3時間近い映画を観ている」というより、ひとつの長い旅へ付き合っている感覚でした。場所が次々に変わり、人物も増え、映像の見せ場も続きます。
休憩なしの長編鑑賞が不安な方は、上映前に飲み物の量などを調整しておく、すぐに出られる座席を予約しておく、と安心です。
『オデュッセイア』は映画館で観るべき?
かなり強く「はい」と答えたいです。もちろん通常スクリーンでも映画そのものは楽しめます。ただ、今回の作品は、映像の大きさや音まで含めて設計された映画です。IMAX®フィルム撮影、ロケーション、巨大セット、衣装や美術など、物理的に世界を作り込む工程が非常に詳しく紹介されています。
配信で観たら面白くない、という意味ではありません。ただ、
初めてこの世界へ入るなら、大きなスクリーンで。
そうおすすめしたい作品です。特にIMAX®で観られる環境が近くにあるなら、有力な選択肢だと思います。なお本作は、2D(字幕/吹替)、IMAX®(字幕)、Dolby Cinema®(字幕)、4DX(字幕/吹替)、MX4D®(字幕/吹替)、35mm(字幕)の全6種9バージョンで公開されます。
映画『オデュッセイア』のまとめ
『オデュッセイア』は、古代から語り継がれてきた冒険物語を、クリストファー・ノーラン監督が現代の大作映画として真正面から作り上げた作品です。……と聞くと、ちょっと身構えてしまうかもしれません。
映画好きな方々がIMAX®やクリストファー・ノーラン監督について、熱く語っているのを見て、「自分にはちょっとハードルが高そう……」と思う人がいるかもしれません。
でも、物語の芯はシンプルです。家へ帰りたい男がいる。夫を待つ妻がいる。父を探す息子がいる。その間に、とんでもなく壮大な旅がある。まずは、その冒険を楽しめれば十分です。
そして観終わったあと、「うまく説明できないけれど、なんかすごかった」と思えたなら、それも立派な映画体験だと思います。そこから神話を調べてもいい。もう一度観てもいい。IMAX®で違う場所を見直してもいい。一度の鑑賞ですべてを受け止めきれないほどの、まさに大作です。
映画『オデュッセイア』は、9月11日(金)全国ロードショーされます! ※9/4(金)~10日(木) IMAX先行上映決定!
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作品名:『オデュッセイア』
原題:The Odyssey
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、サマンサ・モートン、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロンほか
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
上映時間:172分
公開日:9月11日 全国公開
ポッドキャストでも映画『オデュッセイア』を紹介!
CinemaStyleのポッドキャスト番組でも、映画『オデュッセイア』を紹介しています。











