今週のおすすめは『スーパーガール』、『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』

映画『スーパーガール』レビュー|スーパーガールは完成されたヒーローではない、“自分の役割”を探す宇宙規模のロードムービー

6月26日(金)公開の映画『スーパーガール』は、新たなDCユニバースにおける劇場作品として登場する一本です。主人公は、スーパーマンのいとこであるカーラ・ゾー=エル。彼女が愛犬クリプトを救うため、少女ルーシーとともに宇宙をめぐる物語です。主演は『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』で注目を集めたミリー・オールコック。監督は『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『クルエラ』のクレイグ・ギレスピーが務めています。

本作を一言で表すなら、「スーパーヒーロー版・宇宙規模のロードムービー」です。

スーパーヒーロー映画と聞くと、街を守る、世界を救う、圧倒的な力で敵を倒す、といった展開を想像しがち。しかし『スーパーガール』は、そうした王道の爽快感だけで押し切る作品ではありませんでした。むしろ中心にあるのは、カーラ(スーパーガール)自身の迷いや不器用さです。彼女は完成されたヒーローではなく、酒場で酔いつぶれ、面倒ごとを避けようとし、責任からも距離を置こうとする人物として描かれます。けれど、その芯には確かな正義感がある。そこが本作の面白さです。

※配給会社の東和ピクチャーズから試写会にご招待いただいています。

目次

愛犬クリプトを救うため、宇宙を旅する

※以下、作品内容に触れています。

物語の発端は、凶悪な略奪者クレムによる惨劇です。クレムに家族を奪われた少女ルーシーは、復讐を果たすため、カーラに協力を求めます。しかしカーラは、簡単には引き受けません。面倒なことには関わりたくない。ところが宇宙船を失ったクレムが、カーラの隙を見て宇宙船を奪い、その際にクレムの毒矢によって愛犬クリプトが命の危機にさらされます。解毒剤を持つのはクレム、猶予は3日間。こうしてカーラは、しぶしぶルーシーと行動を共にすることになるのです。

ここで重要なのは、カーラが「世界を救うため」に立ち上がるわけではないこと。彼女を突き動かすのは、もっと個人的で切実な感情です。大切な存在を失いたくない。その思いが、彼女を旅へと向かわせます。だからこそ本作は、スーパーヒーロー映画でありながら、どこか個人的な物語として響いてきます。

黄色い太陽と赤い太陽が生む、わかりやすい緊張感

本作で興味深い設定のひとつが、太陽の色によってスーパーガールのパワーが変化する点です。スーパーガールは、黄色い太陽のもとでは強大な力を発揮します。一方、赤い太陽のもとでは力を失い、普通の人と変わらない状態になります。(ちなみに、地球の太陽はDC作品における「黄色い太陽」に分類されます。)

この設定があることで、物語は単純なパワーバトルになりません。

「この星では力を発揮できる!」
「ここでは苦戦するのか……」

など、惑星ごとに状況が変わるため、観客側にも戦いの条件がわかりやすく伝わります。圧倒的な力を持つヒーローでありながら、常に優位に立てるわけではない。その不安定さが、この物語の緊張感につながっています。

悪役クレムの“嫌なやつ”ぶりが効いている

クレムは、近年の映画に多い「事情のあるヴィラン」とは少し違います。観客がまず受け取るのは、彼の冷酷さと残虐さ。彼はただ力任せに暴れるだけではありません。スーパーガールの能力を理解し、その対策を取ってくる頭の切れる敵でもあります。そのため、カーラのほうが戦闘能力で上回っているように見えても、簡単には勝てません。

ヒーローが強すぎると、物語は平板になりがちです。しかし本作では、太陽の色、惑星ごとの条件、クレムの策略が重なり、スーパーガールを苦境に追い込みます。

宇宙の“生活感”が楽しい

『スーパーガール』の大きな魅力は、宇宙の描き方にもあります。惑星から惑星へ移動する旅。酒場に集まる異星人たち。ワームホールを移動するバス。少し気味の悪い生き物や、どこか懐かしさを感じるSF的な風景。本作の宇宙は、きれいに整った未来都市というより、もっと雑多で、荒っぽく、生活感のある場所として描かれます。カーラの宇宙船も、ヒーローの拠点というより、散らかった部屋の延長のようです。

その空気感が、カーラという人物像とよく合っています。完璧ではないヒーローが、完璧ではない宇宙を旅していく。その組み合わせが、本作独自の味になっています。また、カーラの故郷クリプトン星で何が起きたのか、そして愛犬クリプトとの出会いが描かれる点も見どころです。特に子犬時代のクリプトは印象的で、カーラにとって彼が単なる相棒ではなく、過去とつながる大切な存在であることが伝わってきました。

爽快感よりも、葛藤と成長を描くヒーロー映画

一方で、王道のスーパーヒーロー映画としての爽快感を期待すると、少し物足りなさを感じるかもしれません。本作は、敵を圧倒的な力でなぎ倒していくタイプの映画ではありません。むしろ、カーラが迷い、葛藤し、自分がどうあるべきかを探す過程に重点が置かれています。そのため、「もっとスカッとした展開が見たい」と感じる場面もあります。

特にクリプトが傷つき、ぐったりしている描写は、犬好きには少しつらいかもしれません。予告編でも触れられている要素ではありますが、愛犬を大切にしている人ほど、心を痛める人もいるかもしれません。ただ、その引っかかりも含めて、本作が描こうとしているものは明確です。

これは、完成されたヒーローの活躍を楽しむ映画ではありません。傷を抱え、過去と葛藤し、まだ自分の役割を見つけきれていないひとりの女性が、誰かと出会い、大切なものを守るために少しずつ変わっていく映画です。

映画『スーパーガール』はどんな人におすすめか

『スーパーガール』は、派手なアクションだけを求める人よりも、キャラクターの成長や関係性をじっくり味わいたい人に向いています。新しいDCユニバースの今後を追いたい人はもちろん、宇宙を舞台にしたロードムービーや、少し荒っぽく懐かしいSF世界が好きな人にも楽しめるはずです。

スーパーマンが正統派のヒーローだとすれば、スーパーガールはもっと不器用で、傷ついていて、危なっかしい存在。けれど、その未完成さこそが本作の魅力です。映画『スーパーガール』は、宇宙を巡るSFヒーローアクションとして、そしてカーラが自分自身の役割を見つけていく成長譚として、劇場の大きなスクリーンで味わいたい作品です。

映画『スーパーガール』は、6月26日(金) 日米同時公開

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この記事はCinemaStyleポッドキャストでのレビュー内容をもとに再構成しています。ポッドキャスト版では、映画の印象や見どころをより会話形式で紹介しています。ぜひ合わせてお聴きください。

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